こんにちは、セプテンマリアの代表、真部裕充です。
たとえば、料理を届けたとき、お客さまから「頼んだものと違うのですが」と声をかけられたとする。こちらは注文どおりに運んだつもりだった。忙しい時間で、次の料理も待っている。
「申し訳ありません」。その言葉は出た。でも、その先はどうするだろう。お皿を下げるのか。注文を確かめるのか。責任者を呼ぶのか。
飲食店のクレーム対応で僕が考えたいのは、謝罪の言葉の上手さだけではない。困っていることを受け取り、確かめ、次の対応を伝えるところまでである。今日は、その最初のやりとりを、店で大切にしたい対応の例として考えてみる。
店の説明を始める前に、何が違ったのかを聞く
同じ「違う」という言葉でも、指していることは一つではない。料理そのものが違うのか。注文した数が違うのか。メニューを見て想像したものと違うのか。
そこを聞かないまま、「こちらで合っています」と説明し始めたら、お客さまと店が別の話を続けることになるかもしれない。
僕なら、まず何について困っているのかを聞きたい。途中でこちらの事情を挟まず、相手が伝えたいところまで受け取る。そのうえで、どの料理を、どのように注文した認識なのかを確かめる。
聞くことは、まだ調べていない原因まで決めることではない。「困っていることを聞きました」と「原因がわかりました」は別だ。注文の記録や、受けた人の確認も必要になる。
お客さまの言葉を疑ってかかるのでも、店の記録だけで話を終えるのでもなく、食い違っているところを見つけたい。相手に説明を聞いてもらうためにも、こちらが先に聞く余地を持ちたいのである。
確かめる前に、大きな約束をしない
その場を早く収めたいと思えば、「すぐに作り直します」と言いたくなるかもしれない。でも、作り直せるか、どれくらいかかるかを確かめていないなら、その約束はまだできない。
謝ることと、対応の内容を決めることは、分けて考えたい。確認できている不手際があれば、それについて謝る。調べる必要があることは、何を確認するかを伝える。
たとえば、「ご注文の内容を確認してまいります」と伝え、店で決めた手順に沿って責任者へつなぐ。変更や返金など、自分の判断で決められないことを、その場の勢いで約束しない。
そして、確認が済んだら、できる対応と必要な時間を説明する。お客さまにも都合がある。作り直しを待てるとは限らないから、こちらの案だけで話を進めず、希望を聞きながら責任者と確かめたい。
立派な返事をして、後から取り消すより、いまわかることを正確に伝える。僕は、その誠実さを大切にしたい。
「謝ったから終わり」にしない
料理を替えた。説明をした。店としての作業は済んだ。それでも、お客さまが次にどうすればよいかわからないままなら、対応は途中だと思う。
たとえば、注文を確認した結果を伝えず、別の料理だけを置いて立ち去ったらどうだろう。最初の料理はどう扱うのか。会計には何が入るのか。お客さまに新しい疑問を残すかもしれない。
だから、対応した内容は短く説明したい。会計に関わることなら、責任者と確認した内容を伝える。まだ決まっていないことを、決まったようには言わない。
最後に、ほかに困っていることがないかを確かめる。ただし、「もう大丈夫ですよね」と、納得の返事を取りにいくのとは違う。店の都合で話を終えるための確認にはしたくないのだ。
声を受けたスタッフを、一人で終わらせない
お客さまから声をかけられた人と、問題が起きたところを知っている人は、同じとは限らない。最初に対応した人へ、原因の説明も、判断も、すべて背負わせるのは無理がある。
社長の僕が考えるべきなのは、誰が悪かったかを急いで決めることより、何を確かめれば対応できるかだ。注文を受けた場面、調理、提供。そのどこで食い違ったのかを見たい。
聞いた話と、記録で確認したことも分ける。「お客さまがこう言っていた」と「実際にこう処理されていた」を一緒にしてしまうと、次に直す場所が見えなくなる。
店の不手際がわかったら、直す。そのうえで、受けた人が判断に迷ったところや、相談しづらかったところも振り返りたい。お客さまの不満を、誰か一人がつらい思いをして終わる出来事にしたくない。
「相談して」と言うなら、相談を受ける側にも仕事がある。途中で引き取るのか、隣で支えるのか、判断を返すのか。会社として、その助け方まで考えていきたい。
次に練習するなら、謝罪のあとまで
僕たちは、お客さまに体験を届けながら、現場で学ぶ会社でありたい。楽しく過ごせたときだけでなく、うまく届けられなかったときにも、その姿勢が問われると思う。
仲間と対応を練習する機会があるなら、謝罪のひと言で止めず、その先を一度やってみよう。何について困っているかを聞く。確かめることを伝える。判断できないことを責任者へつなぐ。確認した内容を、お客さまへ返す。
難しい言葉を増やす必要はない。わからないことをわかったふりせず、困っている人を話の途中に置き去りにしない。その対応を、現場だけの頑張りにせず、会社として支えたい。
店の中で必要な情報を渡すことについては、「飲食店のチームワーク。『声をかけた』で終わらせない。」にも書いた。今回は、その確認したことを、お客さまへ返すところまで考えてみた。




