こんにちは、セプテンマリアの代表、真部裕充です。

たとえば、ホールではお客さまから料理について聞かれ、キッチンではいくつもの注文を進めている。ホールは早く返事が欲しい。キッチンは、手を止めずに料理を仕上げたい。

どちらも、お客さまのために動いている。それでも、うまくかみ合わないことがある。

そんなとき、飲食店のチームワークを「もっと仲良く」「もっと声を出そう」だけでよくしようとしても、足りないのではないか。僕は、相手に見えていない状況を、短く渡すことから考えたい。

同じ店にいても、見えているものは違う

ホールには、お客さまの表情や、声をかけられたときの様子が見える。一方、キッチンには、調理の進み具合や、いま手を離せない作業が見えている。

同じ営業に参加していても、同じ情報を持っているわけではない。

ここで「見ればわかるでしょ」と思うと、話が止まってしまう。自分には目の前のことでも、相手からは見えないかもしれない。相手が何を知らないのかを考える余地はある。

もちろん、営業中に事情をすべて説明するのは難しい。長い説明で相手の仕事を止めたいわけでもない。だからこそ、次の判断に必要なことを選んで伝えたいのだ。

「早くして」より、何を確かめたいか

ここからは、伝え方の例を考えてみる。

たとえば、お客さまから料理がいつ来るか聞かれた場面。「料理、まだですか」とだけ伝えたら、相手はどの席の、どの料理を確認すればよいかわからないかもしれない。

「何番席の、どの料理について聞かれたか。いま知りたいのは、提供までの見通しだ」。そこまで絞れれば、確認する対象がはっきりする。

キッチンからも、「まだ」と返すだけでは、ホールはお客さまに説明しづらい。いま確認できることと、まだわからないことを分けて返す。見通しが立たないなら、無理に時間を約束せず、確認が必要だと伝える。

大事なのは、うまい言い回しを暗記することではない。相手が次に動くために、何を知る必要があるか。その一点を考えることだ。

伝える言葉を短くするのと、必要な情報まで省くのは違う。「急いで」のひと言に、こちらの事情を全部背負わせないようにしたい。

返事が返って、初めて次へ進める

もう一つ、気にしたいことがある。声をかけた後、相手が受け取れたかどうかだ。

たとえば、料理を運んでほしいと頼んだとする。声は出した。でも、相手は別の対応をしていて聞き取れなかった。それなのに、頼んだ側は「もう任せた」と思っている。これでは、二人の間で仕事が止まってしまう。

頼まれた側が引き受けられるなら、何を引き受けるかを短く返す。いま難しいなら、そのことを返す。頼んだ側も、返事がないまま引き受けてもらえたことにしない。

断りにくくて曖昧にうなずくより、「いまはこちらを対応中です」とわかったほうが、別の動きを考えられる。忙しい人に、さらに全部を抱えてもらうための返事ではない。店全体で、仕事の行き先を確かめるための返事だ。

僕が見たいのは、声の量より仕事のつながり

僕が外食を選んだ原点の一つには、仲間と本気で取り組み、受け取ってくれる人と時間を共有したい、という思いがある。僕たちが届けたい体験は、一人の仕事だけでは完成しない。

料理をつくる人がいて、運ぶ人がいて、お客さまに説明する人がいる。それぞれの仕事がつながって、お客さまの一時になる。

だから社長としても、「声が少ない」「元気がない」と印象だけで判断したくない。必要な確認が、どこで止まったのか。伝えたかった相手に届いたのか。返事を待てる状況だったのか。実際のつながりを見たい。

同時に、確認の言葉だけで解決できないこともある。注文や作業が集中し、どう組み替えても手が足りないなら、仕事量や配置を考え直す必要がある。伝え方を工夫すれば何でも解決する、と現場に押しつけるつもりはない。

仲間同士で確かめることと、会社が営業の組み立てを考えること。その両方が必要だと思っている。

次の営業では、返事までを一つの仕事に

次に仲間へ何か頼むとき、一つだけ試してみてほしい。

「どの仕事について、何をしてほしいか」を短く伝え、相手の返事まで確かめる。頼まれた側なら、受け取ったことと、いま対応できるかを返す。店で決めた連絡の方法に沿って、その往復を大切にしてみる。

声が飛び交っていることより、必要な仕事が次の人へ届いていること。僕は、そこを見ていたい。

自分の持ち場で見えていることを、仲間が使える情報にする。そんな連携を重ねながら、気持ちよく過ごせる一時を、一緒につくっていこう。

仕事をチームで続ける仕組みについては、「会議が嫌いだった僕が、会議を増やした理由」にも書いている。営業中の短いやりとりと、落ち着いて話す時間。どちらも、仲間の仕事をつなぐために使っていきたい。