こんにちは、セプテンマリアの代表、真部裕充です。

たとえば、会計を済ませたお客さまが、席に戻って上着を着ている。隣では、連れの人が荷物をまとめている。スタッフは、次のお客さまを迎えるために、早く席を整えたい。

このとき、どこから片づけを始めるだろう。帰り支度のすぐ横で食器をまとめるのか。まず通り道を空けるのか。少し待って、声をかけるのか。

飲食店のお見送りというと、「ありがとうございました」の言い方を考えたくなる。でも僕は、その少し手前にある、帰り支度の時間から考えてみたい。お客さまの一時は、会計の瞬間に終わるわけではないからだ。

帰る途中にも、お客さまの時間がある

食事中はよく見ていたのに、会計が終わった途端、店の仕事だけに目が向いてしまう。それでは、帰ろうとしている人の困りごとを見落とすかもしれない。

たとえば、椅子の横に荷物があり、上着に袖を通すための場所が欲しい場面。そこへ片づけのために近づけば、こちらに悪気がなくても、お互いに動きにくくなる。

僕なら、先に相手が何をしようとしているかを見たい。まだ支度をしているなら、無理にその場所へ入らない。通路に店の物が出ていれば、安全に動かせる範囲で整える。助けが必要そうなら、短く声をかける。

手を貸すときも、荷物や上着にいきなり触れない。「お手伝いしましょうか」と確かめて、必要な分だけ関わる。親切のつもりで、相手の支度をこちらのペースに変えたくないのだ。

これは、僕が大切にしたい対応を考えるための例である。すべてのお客さまに同じ動作をする、という話ではない。すぐに出たい人もいれば、連れを待つ人もいる。その違いを見たい。

感謝の言葉に、お願いを詰め込みすぎない

店としては、また来てほしい。僕にも、もちろんその気持ちがある。

ただ、帰ろうとしている人に、次回の案内も、おすすめも、店の話も全部聞いてもらおうとしたら、どうだろう。手に荷物を持ち、出口へ向かっている人には、長い説明が負担になる場面もあるはずだ。

だから、お見送りでは、まず来てくださったことへの感謝を伝えたい。お客さまが足を止めて話してくださるなら、会話を続ければいい。急いでいるなら、短く伝えて送り出す。それで十分なときもある。

「また来てください」と言うこと自体が悪いわけではない。でも、その返事まで求めるような見送りにはしたくない。今日ここで過ごしてくださったことへの感謝は、次の来店を約束してもらわなくても伝えられる。

僕たちは、お客さまに体験を届ける会社でありたい。ならば、その体験の最後を、こちらが伝えたい情報でいっぱいにしない余白も、大切だと思う。

片づけを進めたい事情も、置き去りにしない

一方で、席を整える仕事も必要だ。次のお客さまが待っている場面なら、なおさらである。見送る人に「もっと気を配って」と言うだけでは、仕事はうまく回らない。

帰り支度を待つことと、片づけを止め続けることは、同じではない。たとえば、まだ人がいる席には入らず、すでに空いた場所から整える。出口をふさぐように食器を運ばない。いま進められる仕事を、動きの中から探したい。

退店の時刻など、店から伝える必要があることは、曖昧にせず言葉で案内する。片づける音や態度で「早く出てほしい」と察してもらおうとするより、そのほうが誠実だと思う。

社長の僕は、見送りと片づけが重なる場面も、営業の仕事として考えたい。両方をいつも同じ人が抱えていないか。入口で待つ人にも、帰る人にも対応できる動きになっているか。

必要な対応が重なって間に合わないなら、作業の順番や分担を見直す余地がある。「最後まで丁寧に」と頼むなら、その丁寧さを支えられる営業を考える。そこは会社の仕事だ。

最後のひと言の前に、相手を見る

僕が外食を選んだ原点には、仲間と本気でつくったものを、受け取ってくれる人と共有したい、という思いがある。目の前の人を笑顔にできる場所を、もっとよくしていきたい。

それを店の仕事に置いて考えると、お見送りも、決まり文句を言い終えたかだけでは見られない。支度を妨げなかったか。困っている様子を通り過ぎなかったか。相手に向けて感謝を伝えられたか。

次にお見送りをするときは、挨拶の前に一度だけ、相手の手元と足元を見てみよう。荷物をまとめている途中なのか。通り道は空いているか。その場面が見えれば、待つのか、手伝いを申し出るのか、短く挨拶するのかを考えられる。

立派な言葉を増やさなくてもいい。帰る人の動きに合わせて、ありがとうを伝える。僕は、そんなふうに、その一時を最後まで大切にしたい。

お客さまが過ごす時間への思いは、「僕はまずその一時を大切にしたい。」にも書いた。迎えるときから、帰るときまで。その間にある仕事を、一つずつ見ていこう。

日々の接客とお見送りについては、こちらの「營業についてメンバーに送ったこと」(2019年11月の記事)に当時の考えを書いています。詳しくは、あわせてご覧ください。

新潟県上越市・高田での店づくりと、ミライザカ上越高田店の所在地・ご予約先は、こちらの「居酒屋事業・運営店舗」をご覧ください。