こんにちは、セプテンマリアの代表、真部裕充です。
スタッフからの改善提案を見送るときも、気づいた困りごとと、採用できない理由は分けて話したい。飲食店のスタッフ教育を、答えを教えるだけで終わらせず、何を見て判断するのかを一緒に考える時間にしたいと思う。
たとえば、営業中によく使う備品について、スタッフから「こっちに置いたほうが取りやすいと思います」と提案があったとする。いまの置き場では、取りに行くたびに遠回りになるらしい。
でも、移したい場所は、ほかの人が料理を運ぶときにも通るところだった。取りやすさだけで決めてよい話ではなさそうだ。
あなたが返事をする側なら、どう伝えるだろう。「そこはダメ」で終えるか。「いいね、考えておく」と預かるか。今日は、こうした説明用の場面から、提案を受け取る側の仕事を考えてみたい。
まず、何に困っているのかを聞く
僕たちは、お客さまに体験を届けながら、自分たちも仕事を通じて学んでいく会社でありたい。学んだことを実際に使い、現場を良くしていきたい、というのが僕の考えだ。
そう考えると、提案の結論を急ぐ前に、聞いておきたいことがある。どの仕事で、どんな不便があったのか。置き場所の案が出てくる、その手前の話だ。
「こっちに移す」という案を見送るとしても、「取りに行くたびに遠回りになる」という困りごとまで消えたわけではない。やり方の案と、解決したいことを、一度分けて受け取りたい。
ここで必要なのは、長い企画書ではないと思う。「何をしているときに困ったか」を、短く聞く。それなら、まだうまい説明にできていない気づきも、一緒に確かめられる。
飲食店のスタッフ教育には、判断の理由も含めたい
先ほどの例なら、僕が返したいのは、こんな内容だ。
「取りに行く距離を短くしたいんだね。ただ、この場所は料理を運ぶ人も通る。ここに置く案は見送りたい。いまの棚の中で、取りやすくできる場所がないかを考えよう」。
これは実際にあった会話の紹介ではなく、返し方の一例である。大切なのは、毎回この言葉を使うことではない。何を受け止め、何を理由に見送り、どこを考え直せるのかが伝わることだ。
作業をする人の取りやすさ。料理を運ぶ人の動き。お客さまが通る場所。自分の持ち場からは見えにくい条件もある。その条件を伝えることも、仕事を教える一部にしたい。
反対に、僕のほうが現場の動きを知らず、案を早く退けてしまう可能性もある。「前からこうだから」を理由にせず、なぜその場所なのかを聞き、必要なら実際の動きを確かめたい。
「見送る」と「まだ決められない」を混ぜない
提案を受けたその場で、判断に必要なことが全部そろうとは限らない。忙しい営業中なら、詳しく話す時間も取れないことがある。
そのときに、聞いていないのに反対したり、確かめていないのに賛成したりしたくない。「いまは判断できない」と伝える場面もあっていい。
ただ、「また今度」で置いたままなら、提案した人には行き先が見えない。誰が何を確認する必要があるのか、次にいつ話せるのか。預かる側が、その続きも考えたい。
すぐ答えることだけが、誠実さではないと思う。まだ決めていないことを、決まったように言わない。そのうえで、話を宙に浮かせたままにしない。僕も、そこを意識したい。
提案を出した人に、全部背負わせない
「自分で考えたんだから、全部やっておいて」。これでは、気づきを出した人に仕事が集まってしまう。置き場を変えるだけに見えても、ほかの担当者への説明や、決まりの確認が必要かもしれない。
どこまで本人が考えられ、どこから責任者の判断がいるのか。試すなら誰と進め、いつ確認するのか。会社の側も、必要な時間や役割を考えたい。
安全や衛生、店で決めた手順を、思いつきで変えるわけにはいかない。一方で、決まりが関わるなら、何を守るための決まりなのかを説明する余地はある。説明できないところがあれば、僕自身も確認する側に回る。
会社が学ぶ場所をつくりたいと言うなら、意見を集めるところだけでは足りない。出てきた意見に向き合い、判断する仕事を、会社の側も引き受ける必要があると思う。
採用されなかった案にも、続きをつくる
すべての案を採用することはできない。でも、案を採用しないことと、その人の気づきを不要だとすることは違う。僕は、そこを雑にまとめたくない。
今回の置き場は変えない。そのかわり、取りに行く手間が生まれている場所はわかった。別の置き方を考えるのか、補充の方法を確かめるのか。次の問いは残せる。
次に改善の提案を受けたら、まず「どの場面で困った?」と聞いてみる。見送るなら、その理由を具体的に返す。提案する側も、立派な案に仕上げる前に、現場で気づいたことから伝えてみてほしい。
自分で考え、相手の事情を聞き、考え直す。採用という結果だけでなく、そのやりとりにも学ぶ機会がある。僕も、返事をする側として、その機会を大事にしていきたい。
話し合いを実行につなぐ考え方は、「会議が嫌いだった僕が、会議を増やした理由」にも書いている。実際に試した後の振り返りについては、「飲食店の改善、やってみたけど成果がわからない。次につなげる三つのメモ」へ。提案を受け取るところから、試した後まで、仕事の学びをつなげていきたい。



