こんにちは、セプテンマリアの代表、真部裕充です。

途中の仕事を引き継ぐときは、終えたことと、まだ確かめていないことを分けて渡したい。次の人が最初に何をすればよいかまで見えれば、全部をやり直すか、続きを進めるかを判断できる。

「途中までやった」が、一番わかりにくいこともある

たとえば、営業に使う備品の在庫を確認している途中で、お客さまの対応に向かう場面を考えてみよう。棚を二つ見たところで手が離れ、別のスタッフに続きを頼む。「在庫の確認、途中だからお願い」。忙しいときなら、そんな一言で渡したくなるかもしれない。

でも、受け取った人には疑問が残る。どの棚まで見たのか。書かれた数は確認済みなのか、これから数える予定なのか。不足している物は見つかったのか。それとも、まだ調べていないのか。

全部を数え直せば、すでに終えた仕事を繰り返す。続きを想像して進めれば、確認していない棚が残るかもしれない。問題は、二人とも一生懸命かどうかではない。作業の境目が、渡した人の頭の中にしかないことだ。

最後まで一人でやれるなら、それがわかりやすい仕事もある。でも、接客が入ったり、持ち場を交代したりすれば、途中で渡す必要も出てくる。飲食店の引き継ぎでは、その途中をどう見せるかも考えたい。

「ない」と「まだ見ていない」を、一緒にしない

同じ在庫確認の例なら、まず分けたいのは、確認できたことと未確認のことだ。「足りない物はない」と「まだ全部を見ていない」は違う。何も書かれていない欄を、次の人が確認済みだと思ってしまわないようにしたい。

たとえば、店で使っている確認表があるなら、どこまで確認したかを、その表に沿って示す。新しい帳票をいくつも増やす前に、今ある記録で途中がわかるかを見てみる。次のような分け方も、一つの例になる。

渡すこと伝え方の例
確認済みの範囲手前の棚と中央の棚は数えた
未確認の範囲奥の棚は、まだ見ていない
次にすること奥の棚を確認して、一覧をそろえる

ここで大事なのは、きれいな報告書をつくることではない。「どこから続ければいい?」に答えられることだ。口頭だけでは残しづらいなら、店で決めた記録場所を使う。記録と実物が食い違っていたら、無理に続けず確認する。わからないところを、わかったことにして進めない。

仕事と一緒に、次の一手を渡す

受け取る側も、話を聞いただけで全部を理解したと思わなくていい。「奥の棚から確認すればいいですね」と、最初にすることを一つ返してみる。違っていれば、その場で直せる。

ただし、続きを頼まれた人が、すぐ引き受けられるとは限らない。別の対応をしているなら、そのことも伝える。いったん置いておける仕事なのか、今すぐ誰かに引き受けてもらう必要があるのか。判断に迷うところは、責任者へ相談する。

途中を残すことと、誰かに任せたことは別だ。記録があっても、引き受ける人が決まっていなければ、仕事の行き先はまだ決まっていない。休憩や交代のたびに仕事を抱え続けるのではなく、どこまで誰が担うかを確かめて渡せる形を考えたい。

引き継ぐための時間も、仕事のうち

僕は、学んだことを現場で使い、お客さまに喜んでもらえる仕事につなげたいと思っている。そのためには、本人の記憶や頑張りだけに頼らず、次の人が使えるやり方にしていくことも必要だ。

もし途中の仕事が何度も置き去りになるなら、伝える人だけの問題にしたくない。引き継ぐ相手が見つからないのか。交代する時間が重なっていないのか。確認の場所がばらばらなのか。会社としても、仕事の組み方を見直す必要がある。

「ちゃんと引き継いで」と言いながら、そのための時間も相手も用意できていなければ、現場は困ってしまう。短い一言を工夫することと、その一言を交わせる状況を整えること。両方から考えていきたい。

次に仕事を途中で渡すとき、一つだけ確かめてみてほしい。相手は、どこから再開すればよいかわかるだろうか。終えた範囲、未確認の範囲、次の一手。この三つのうち、抜けているところがあれば補う。

自分がいなくても、続きがわかる。そんな渡し方も、仲間と一緒にお店をつくる仕事の一つだと思う。

仕事を終えたときの渡し方は、「飲食店の仕込みを教えるとき、『どこまでできたら完了か』をそろえる」へ。営業中に頼み事を受け渡す話は、「飲食店のチームワーク。『声をかけた』で終わらせない。」にもまとめている。