キッチン管理はトヨタに学べ。

― 飲食店は「気合い」だけでは強くならない ―

僕は以前から、
「飲食店の本質は製造業である」
と言い続けています。

もちろん、異論はあると思います。
「飲食店はサービス業だろう」と。

でも、僕は本気でそう考えています。

なぜなら、飲食店の利益構造を見れば分かるからです。

原価は食材で発生する。
人件費の多くは厨房での“生産”に使われる。
そしてキッチンでは、毎日大量の商品を、限られた時間の中で、品質を維持しながら作り続けている。

つまりキッチンとは、
“超短納期・個別受注型の工場”
なんです。

だからこそ、飲食店のキッチン管理は、トヨタ生産方式(TPS)から学ぶことが非常に多い。

今日は、その中でも特に重要な

  • 多能工化
  • 設備管理
  • ワークスケジュール(WS)

について、現場レベルで具体的に考えていきたいと思います。


「このポジションしかできない」は、店を弱くする

まず、多能工化です。

TPSでは、一人が複数工程を担当できる状態を重要視します。

飲食店でいうと、

  • ドリンクだけ
  • 揚げ場だけ
  • 刺し場だけ
  • 焼き場だけ

しかできない状態です。

これは一見、専門性が高いように見える。

でも実際は、店全体の生産性を大きく下げます。


例えば、こんな状況

21時。

  • ドリンクが大量に入る
  • 揚げ場は少し落ち着いている
  • 刺し場は空いている

この時、

「自分は揚げ場なんで」

で止まっていると、ドリンクだけがパンクする。

すると、

  • 提供遅延
  • クレーム
  • 滞在ストレス
  • 回転率低下

につながる。

でも、多能工化されている店なら違います。

揚げ場の人が一時的にドリンク補助へ行く。
刺し場の人が洗い場を助ける。
ホールがドリンクを作る。

すると、店全体が止まらない。

つまり、

“ポジションを守る”より、店を守る

発想が重要なんです。


「2ポジションできる」は最低条件

今後、うちの店でもさらに重要になるのが、

“最低2ポジション”

という考え方です。

例えば、

  • ホール+ドリンク
  • ドリンク+揚げ場
  • 揚げ場+焼き場
  • キッチン+ホール

など。

これができるだけで、WSの組み方が一気に変わる。


WS(ワークスケジュール)が強くなる

例えば、金曜日。

普通の店だと、

  • ドリンク専属
  • ホール専属
  • 揚げ場専属

で人数を増やすしかない。

でも多能工化されている店は違います。

忙しい時間帯だけ役割を変える。

つまり、

19〜21時はドリンク補助。
21時以降はホール。
23時以降は洗い場締め。

みたいな組み方ができる。

すると、人数を増やさなくても店が回る。

これがTPSでいう「少人化」です。


少人化とは「人を減らす」ではない

ここを勘違いしてはいけない。

少人化とは、

“少ない人数で高い価値を出せる状態”

を作ることです。

つまり、

  • 無駄を減らす
  • 動線を改善する
  • 多能工化する
  • 標準化する

ことで、

同じ人数でも、より高い価値を出せるようにする。

その結果として、

  • 利益
  • 教育
  • 給与
  • 新規出店

につながる。

つまり、改善とは人を幸せにするためにやるんです。


「設備」は働く人をラクにするためにある

TPSでは設備管理も非常に重要です。

例えば、

  • フライヤー(F)
  • ジェットウォッシャー
  • 冷蔵庫
  • ハイボールマシン
  • 食洗器

これらは全部、

“人を助けるための設備”

です。

でも、飲食店では意外と、

「設備を雑に扱う」

ことが多い。


例えばフライヤー

暇な平日にFを2台とも立ち上げている。

これ、かなり無駄です。

油代。
ガス代。
清掃負担。

全部増える。

TPSでは、

稼働率と可動率

を重要視します。

つまり、

  • 使うならフル活用する
  • 使わないなら動かさない

という考え方です。


「壊れる」は突然ではない

設備って、突然壊れるわけじゃない。

大体、

  • 清掃不足
  • 油汚れ
  • フィルター放置
  • 無理な使い方

の積み重ねです。

つまり、

清掃もTPS

なんです。

例えば、

ジェットウォッシャーが止まる。
食洗器が壊れる。

これだけで、現場生産性は一気に落ちる。

だから、

  • 毎日掃除する
  • 異音を気にする
  • 汚れを放置しない

こういう“当たり前”が、実は利益を守っている。


「探す時間」は利益を捨てている

TPSでは、探し物を嫌います。

例えば、

「あれどこだっけ?」

この時間。

実はかなり危険。

調味料探し。
伝票探し。
備品探し。

これ、全部“利益が止まっている時間”なんです。

だから棚割りが重要。

しかも棚割りは、

「置ければいい」ではない

  • 使用頻度
  • 利き手
  • 動線
  • 補充しやすさ
  • 衛生面

まで考える。

例えば、

毎回しゃがまないと取れない。
振り返らないと取れない。

これだけで1オーダー数秒ロスする。

でも、飲食店は1日数百オーダーある。

つまり数秒が、年間で何十時間にもなる。


WSは「人数表」ではない

ここも重要です。

WSは単なるシフト表ではありません。

“生産性設計図”

なんです。

例えば、

  • この時間に誰が忙しくなるのか
  • どこがボトルネックか
  • 何人必要か
  • 誰と誰を組ませるか

これを考える。

例えば、

新人同士をピークに並べれば崩壊する。
ベテランだけで組めば教育できない。

だから、

  • 教育
  • 生産性
  • 利益
  • 現場力

全部考えてWSを組む。

つまりWSとは、
店長の“経営そのもの”なんです。


「忙しい=悪」ではない

ここも最近勘違いされやすい。

生産性が高い日って、実はみんな楽しそうなんです。

忙しい。
でも回っている。
声が出ている。
連携している。

こういう日は、終わった後の達成感が違う。

逆に、

ダラダラ。
止まっている。
空気が重い。

こういう日は、疲れる。

つまり人は本来、

“本気で何かをやり切る”

ことに喜びを感じる生き物なんだと思います。


毎日がTRY

TPSの本質は、

「完璧だから強い」

ではありません。

毎日改善するから強い。

  • 棚割りを変える
  • 動線を変える
  • 声掛けを変える
  • 設備管理を変える
  • WSを改善する

全部TRY。

飲食店は毎日改善。

昨日より今日。
今日より明日。

その積み重ねが、

「なんかこの店、いいよね」

を作っていく。

今は比較的落ち着く時期。

だからこそ改善には最高のタイミングです。

今日も何か一つ、昨日より良くしていきましょう!