もし、「もっといい接客をしよう」と言われたら。
あなたは、何を思い浮かべるだろう。
笑顔で迎える。
元気に挨拶する。
気の利いたひと言を添える。
どれも大切だ。
ただ、社長の僕には、その接客をする仲間の働き方も見ておく責任がある。
分からないことを聞けるか。
困ったときに、助けを呼べるか。
頑張る人に、仕事が集まりすぎていないか。
接客の話をしていたのに、スタッフの話になった。
そう感じたかもしれない。
でも、僕がつくりたい店では、この二つがつながっている。
セプテンマリアの真部裕充だ。
新潟県上越市で、ミライザカ上越高田店を営んでいる。
お客さまに、元気になって帰ってほしい。
そして、働く仲間にも、明日を少し楽しみにしてほしい。
今日は、その両方を育てる店づくりについて話したい。
元気な接客は、声の大きさだけでは決まらない
たとえば、久しぶりに会う友人と、ゆっくり話したいお客さまがいる。
一方で、注文の仕方が分からず、誰かに声をかけたいお客さまもいる。
同じ店の中でも、望んでいる距離は違う。
こちらが元気いっぱいでも、相手の話を遮ってしまったら、心地よい時間にはならない。
反対に、遠慮して声をかけなければ、困っている人を待たせてしまう。
あなたがお客さまなら、どんなふうに声をかけてほしいだろう。
そこを想像しながら、よく見る。
表情を見る。手元を見る。会話の間を見る。
そして、必要なら短く聞く。
「何かお困りですか」でもいい。
大事なのは、相手が答えやすい声のかけ方を考えることだ。
元気な店とは、大きな声が響く店、というだけではない。
お客さまが安心して、自分たちの時間を過ごせる店。
僕は、その安心も元気の一つだと思っている。
「気づいて」で終わらせない。それが会社の仕事だ
ここで、社長の僕にも仕事がある。
スタッフに「もっと周りを見て」と言うだけでは、何を見ればよいのか分からない。
たとえば、料理を届ける場面なら。
お皿を置く場所はあるか。
お客さまの会話や動きを、急に止めていないか。
必要なものが足りているか。
見るところを具体的にすれば、次に試すことが見えてくる。
教える側も、「説明したから終わり」にしない。
やってみる様子を見て、迷ったところを聞く。
できたところを確かめ、次に変えることを一つ決める。
こういう教え方を、会社の中に増やしたい。
僕たちが大切にしたいのは、「社会人0年生を1年生へ導く」という考えだ。
初めて働く人が、最初から全部できるはずはない。
質問し、試し、振り返る。
その経験を重ねられる場所をつくりたいのである。
いいスタッフを、一人で頑張らせない
たとえば、よく気づく人に、仕事が集まってしまう店を想像してみてほしい。
その人は自分の仕事を終え、周りの仕事まで引き受ける。
店が、その頑張りに頼り切ってしまったら。
でも、それが続けばどうなるか。
丁寧に働く人ほど、抱える仕事が増えてしまう。
僕は、真面目な人が、その真面目さで損をする会社にはしたくない。
ここは、店をつくる側の出番だ。
忙しい時間こそ、役割を確かめたい。
今、誰がどこを担当しているのか。
どこで仕事が詰まっているのか。
助けが必要なら、誰に伝えるのか。
たとえば、引き継ぐときに「あと、よろしく」だけで終えない。
終わったこと。残っていること。先に対応したいこと。
そこまで渡せれば、次の人は動きやすくなる。
社員を大切にするという言葉を、こうした仕事の分け方や教え方にしていきたい。
休むこと、相談することも含めて、元気に続けられる店をつくる。
役割と相談先を整える。
そこは経営者である僕が、引き受けたい仕事なのだ。
地域を元気にする。出発点は、目の前の一人だ
目の前の人を笑顔にして、地域の明るさを人から灯したい。
僕が外食を選んだ原点には、その思いがある。
「地域を元気にする」と言うと、大きな話に聞こえるかもしれない。
でも、僕が増やしたいのは、もっと身近な時間だ。
誰かと話せて、少し気が晴れる。
温かく迎えられて、ほっとする。
帰り道に、今日ここへ来てよかったと思える。
そんな時間を、上越高田の一つの店から届けたい。
そして働く仲間にも、自分の気づきや工夫が人の役に立った、と感じてほしい。
その経験を、次の仕事や、自分のやりたいことにつなげてほしい。
僕たちは、体験をお客さまに届けながら、現場で学ぶ会社でありたい。
学んだことを使う。相手の反応を見る。また考える。
商売の面白さは、その往復にもある。
次の営業で、一つだけ確かめてみよう
では、次の営業で何をしてみようか。
お店で働いているあなたなら、見る場面を一つ選んでみてほしい。
入店のとき。料理を届けるとき。お見送りのとき。
その中で、お客さまが迷うところはないだろうか。
気づいたことがあれば、仲間と共有する。
安全や店の決まりに関わることは、責任者と相談する。
そして、小さく試して、どうだったかを確かめる。
僕たちは、目指す店をつくっている途中である。
だから、仲間と一緒に、一つずつ良くしていきたい。
お客さまが元気になれる。
働く人も、少し自信を持てる。
その両方を、今日の営業から育てたい。
気づけることが、一つ増える。
誰かの手助けが、一つ増える。
その先で、店を出る人の明日が、少し明るくなる。
僕は、そんな店をつくる社長でありたい。
この仕事を選んだ原点は、「どうして外食をやろうと思ったのか」にも書いている。
僕がどんな仲間と、どんな会社を育てたいのか。気になったら、もう一篇読んでもらえたらうれしい。




