こんにちは、セプテンマリアの代表、真部裕充です。

接客に向いていないと感じたら、まず何をしているときに困るのかを具体的にしたい。会話、説明、仕事が重なる場面を分け、教わり方や仕事の組み立ても確かめる。そのうえで、続けるか、別の役割を考えるかを選んでほしいと思う。

たとえば、お客さまと話しても、先輩のように会話が弾まない。帰り道に「自分は接客に向いてないのかな」と考える。これは、話を考えるための仮の場面だ。

先輩は楽しそうだし、お客さまも笑っている。その横で、自分の言葉だけが短く終わってしまう。比べたくなる気持ちはわかる。でも、それだけで接客という仕事を全部まとめて判断するのは、少し早いかもしれない。

会話が続かないとき、何に困っているのか

僕が店で届けたいのは、来てくださった人が気持ちよく過ごせる時間だ。スタッフ全員が、同じように話を盛り上げることを目的にはしたくない。

お客さまの話を聞く。聞かれたことを確かめて答える。必要な案内をする。接客には、雑談以外にもいろいろな仕事がある。話題を次々に出すのは苦手でも、相手の話を落ち着いて聞ける場面はないだろうか。

もちろん、必要な挨拶や案内をしなくてよい、という話ではない。お客さまが困っているのに、話すのが苦手だからと放っておくわけにもいかない。だからこそ、何を身につける必要があるのかを、雑談の得意不得意と分けて考えたい。

先ほどの人なら、困っているのは「料理について聞かれると、説明する順番がわからなくなる」ことかもしれない。それなら、性格を変えようとする前に、説明する内容を確かめ、練習できる。

同じ「苦手」でも、必要な手助けは変わる

たとえば、注文を聞いている途中で別の席から呼ばれると、何から対応すればよいかわからなくなる人がいたとする。落ち着いた時間なら、注文の確認はできている。これも説明用の例だ。

この場面を「人と話すのが苦手」で終えると、困りごとから離れてしまう。必要なのは、仕事が重なったときの優先順位や、誰に助けを頼むかを教わることかもしれない。

反対に、落ち着いた時間でも、何を確認するのか自体がわからないなら、最初の説明へ戻る必要がある。手順を知らないのか。知っているが、実際にはまだできないのか。いくつも同時に求められると難しいのか。

同じひと言で片づけず、止まったところを一緒に見たい。原因を決めつけるためではない。次に何を教わり、何を会社が変えるのかを選ぶためだ。

僕も「向いていない人」で話を終えない

働く人が学び、できることを増やせる場所をつくりたい。それが、僕が会社をやる理由の一つだ。ならば、うまくできない人を見たときに、本人の適性だけで結論を出したくない。

説明したつもりで、一度も一緒にやっていなかった。質問する相手が、その時間には別の仕事で手いっぱいだった。最初から、いくつもの判断を同時に渡していた。会社の側にも、確かめることはある。

「そのうち慣れるよ」と励ます前に、どこを見て、どう動けばよいかを伝えたい。教える側で言うことが違っていないかも、確認したいと思う。

また、一人に仕事が集まりすぎているなら、その人の練習だけでは片づかない。担当する範囲や、周りが手伝える組み立てを考える必要がある。できない理由を本人の中だけに探すのは、会社として楽をしすぎだと思う。

できている仕事も、同じ紙に置いてみる

苦手な場面が続くと、できなかったことばかりが残る。だから、困った場面と一緒に、無理なく進められた仕事も一つ書いてみてほしい。

たとえば、説明を始めるのは難しかったが、お客さまの質問を聞き漏らさず、責任者に確かめることはできた。会話は短くても、注文の内容を丁寧に確認できた。そんな行動が実際にあったなら、それも仕事の一部だ。

無理に長所へ言い換える必要はないし、できていない確認を、できたことにしてはいけない。反対に、苦手なこと一つで、その日にした仕事を全部ゼロにもしなくていい。

僕も、盛り上がった会話だけを見て、その人の働き方を決めないようにしたい。お客さまや仲間に必要なことを、どんな行動で届けていたか。そこを具体的に見ていたい。

続けるかを考えるためにも、場面を言葉にする

ここまで書いたのは、誰でも必ず接客に向いているとか、今の仕事を続けるべきだ、という話ではない。別の役割や働き方を考えることも、選択肢にあっていい。

ただ、選ぶための材料が「自分はダメだ」だけでは、次に何を変えればよいかが見えにくい。困る作業と、そのときの状況、教わりたいことが言葉になれば、今の職場で相談するときにも、別の仕事を考えるときにも使える。

次に振り返るなら、「何をしていたか」「どこで困ったか」「何があれば進めそうか」を、一つの場面で書いてみよう。教える側は、その話を聞いて、本人に練習してもらうことと、自分たちが整えることを分けてみる。

僕は、目の前の人を短い評価でわかったことにしたくない。接客に向いていない、と結論を出す前に、その仕事の中身を一緒に確かめられる会社でありたい。

教わる環境については、「飲食店の新人教育、『見て覚えて』で終わらせない。会社が整える三つのこと」にも書いた。自分に必要な手助けを考える入口として、あわせて読んでみてほしい。